樹脂類は、塗料皮膜の性能を決定づける最も重要な成分で、「植物油脂」、「天然樹脂」、「合成樹脂」、「セルロース(繊維素)」などが用いられ、植物油脂と天然樹脂は「天然産物」ですが、合成樹脂とセルロースは石油化学製品を原料とする「人工産物」です。
溶剤は、樹脂類を溶解して、適度な流動性を持たせ、塗りやすい状態にするもので、「炭化水素類」、「アルコール類」、「エステル類」、「ケトン類」などが用いられています。。
顔料は、塗膜を不透明にして着色をするための色料で、鉱物質の「無機顔料」と人工の「有機顔料」とが用いられています。無機顔料は、日光や熱に強いが、有機顔料に比べ冴えた色は出にくく、アクセントカラーなど色の冴えが求められる場合には有機顔料でないと色出しができない。
塗料の成分は、上記3成分のほかに、「乾燥剤」、「可塑剤」、などの「添加剤」の成分が少量配合され、これらの諸成分がバランスよく配置され、塗りやすく、よく乾き、はがれず、耐久性の優れたものが良い塗料とされています。
樹脂類を溶剤に溶かしたものが「透明塗料」で、速乾性のものを「ニス」、それ以外のものを「ワニス」(油性ワニス、ウレタンワニス)と慣習的に呼ばれています。また、「クリヤ」はワニスよりは速乾性で透明度の高いものを指します。
透明塗料に顔料を練り込んで着色したものが、「不透明塗料」(有色塗料)で、ハケ目などが残り高光沢でないものを「ペイント」(油性ペイント、合成樹脂エマルションペイントなど)、塗り肌が滑らかで高光沢のあるものを「エナメル」(フタル酸樹脂エナメルなど)称し区別して使用されています。
塗料の種類と分類
塗料の種類は、各種の方法で分類されますが、主な分類として「水性塗料」、「弱溶剤塗料」、「強溶剤塗料」3つに分類されます。
水性塗料とは、水で希釈し、臭いが殆どなく、乾きが早く引火性がないことが特徴で、ホルムアルデヒドやVOCの放散量が殆どない「環境配慮型塗料」です。一般的には、外壁や屋根、室内の天井や壁などに塗ることが多い塗料ですが、乾燥中に湿気が多くあると、乾燥不良を起すこともあり、色むらの発生や、耐久力不足になることもあります。
弱溶剤塗料とは、塗料用の薄め液(シンナー)で希釈し、鉄部や木部に塗ることが多い塗料で、水性塗料に比べると臭いがあり、乾きも遅いですが、密着性や耐候性、仕上がり状態は水性塗料よりも優れています。(一般的に市販されている油性塗料はこのタイプのものが多いです。)
強溶剤塗料とは、ラッカーシンナーなど、強い溶解力をもつシンナーで希釈する塗料で、耐薬品性、耐水性等が特に求められる場所に塗装することが多く、他の塗料に比べて非常に臭いため、住宅では殆ど使われなくなりました。しかし、塗料の性能としては他の2種類の塗料よりも上です。
さらに、塗膜の主成分別(樹脂)に分けると「アクリル樹脂塗料」、「ウレタン樹脂塗料」、「シリコン樹脂塗料」、「フッ素樹脂塗料」の4つに分類されます。
アクリル樹脂塗料
外壁・内壁幅広い用途をもったタイプで、水性タイプ・溶剤タイプなど多品種あります。
他の樹脂に比べ、一番安価ですが、塗り替え周期は他の樹脂より短いです。
ウレタン樹脂塗料
外壁・木部・鉄部等幅広い用途に採用されています。
水性タイプと溶剤タイプがあります。
シリコン樹脂塗料
外壁や屋根などに採用されている塗料で、水性タイプと溶剤タイプがあります。
性能はフッ素樹脂に次ぐ高耐候性塗料です。
フッ素樹脂塗料
外壁や鉄部に用いられる塗料で、耐久性や耐候性に優れ、平均塗替周期は最も長くなります。
水性タイプと溶剤タイプがあります。
部位や素材によって、塗替え時期を見定めましょう
住宅診断・簡単塗装チェック!を参考にして下さい。
木部の塗装
木部と言っても屋外、室内、家具などがあり、それぞれに合う塗料を塗る必要があります。木は呼吸しているために塗装が剥げやすく、また、建物外部の木部では、紫外線や雨風からの保護も必要です。木部の塗装には大きく分けて、「木目を生かす」ニスやオイルステインと、塗膜で「木目を隠す」ペイントやエナメル仕上げがあります。
木目を生かす塗装
【オイルステイン】
「OS」と略されるこの仕様は、一般的には木目が透ける程度に薄めたOPやSOPを染み込ませて色を付け、膜で覆わない仕上のことを指します。
【2液形ポリウレタンワニス塗料】木部用クリヤー
【木材保護着色塗料】
木材保護着色塗料としては、「キシラデコール」が有名です。「キシラデコール」とOSとの違いは、防腐防虫効果があることです。木目を生かした塗装をウリにするOS以外の塗料は他にもたくさんあり、ドイツやアメリカからの輸入塗料も一部で流行しているようです。
【水性ウレタンクリヤー】
昨今問題となっているホルムアルデヒドやトルエン等がほとんど入っておらず、人体にやさしく安全です。
【自然塗料】
自然塗料とは、人に優しい無公害・自然派塗料です。植物から成分を抽出して作られています。特長として、その成分から、第一に人体に無害であるという事です。又、木材の呼吸を止める事がありません。主なものに、漆塗り、カシュー塗り、柿渋塗り、弁柄塗り(ベンガラ塗り)、蝋(ロウ)などがあります。
漆塗り)
漆の木の樹液が主成分で、常温多湿で乾燥させるので時間が掛かりますが、硬くてアルカリや油に強く、光沢があり美しい自然塗料です。しかし、耐候性が悪く手入れに手間が掛かるのが弱点です。)
カシュー塗り
塗膜外観や性能が漆によく似ているカシュー塗りは、カシューナッツシェルオイルと言う、インドやブラジルで採れる、カシュー樹の実を包む殻に含まれるフェノール性油を材料とする自然塗料で、漆と異なり湿気がない方が乾燥し易く、現場で塗ることができますが耐候性は良くないです。
柿渋塗り
渋柿の実を砕いて絞り濾過して、発酵させた自然塗料です。昔から、防水・防腐・防虫として利用され、松煙やベンガラなどの顔料に柿渋を混ぜて、下見板や、戸格子、板塀などに塗られてきました。
弁柄塗り(ベンガラ塗り)
インドのベンガルに由来した塗料で、主成分は酸化鉄で、製法により黄色から暗赤色まであり、京都の紅殻格子や滋賀県長浜地方の軸組などは、防腐の目的で塗られていました。
蝋(ロウ)
ハゼノキの果実から作られる「ハゼ蝋」、ハゼノキと近縁なウルシの果実からもハゼ蝋と性質のよく似た「ウルシ蝋」、ブラジルロウヤシの葉の表面を覆う「カルナウバ蝋(カルナバ蝋)」、ミツバチが巣を作る際、腹部腹板にある蝋腺という器官から分泌する「蜜蝋」、カイガラムシの一種・イボタロウムシ(イボタノキなどモクセイ科の樹木に寄生する)の雄幼虫がイボタノキの枝の周囲に群生して分泌した棒状の「イボタ蝋」などが有名で、塗料や滑りをよくするために使われていました。
注):自然塗料を木目を生かす塗装の項目に記載していますが、漆塗り、カシュー塗り、弁柄塗りの一部には、木目が隠れる塗装となるものも含まれています。
木目を隠す塗装
【油性調合ペイント】
OP」と略されるこの仕様は、粉を混ぜた油を塗るという感じの古風な塗料です。合成樹脂調合ペイント(SOP)が一般化する以前は、油性調合ペイント(OP)がよく用いられていましたが、乾燥がSOPの2倍くらい遅いことから、最近では殆ど使われなくなりました。
【合成樹脂調合ペイント】
いわゆる普通の「ペンキ」です。安価なため大半の塗装屋さんが使用されています。乾燥したSOPの塗膜は硬く、木材の伸縮に追従できず、やがてはパリパリに剥がれてきます。また、SOPの塗膜が木材の呼吸を妨げるため,塗り替えを繰り返し、膜が厚くなると木材内部の空気の熱膨張により、塗膜がイボ状に膨らんでくることがあります。
【ウレタン樹脂】
合成樹脂調合ペイント(SOP)より耐候性に優れ、塗膜は硬く艶も出ます。ただし、木の伸縮追従に難があります。
【2液形ポリウレタン樹脂エナメル塗り】
外壁、鉄部、木部などの新設、塗り替えと幅広く使用でき、すぐれた耐候性、耐水性、耐アルカリ性などの性能を発揮し、また、防藻、防かびタイプがあります。
【非水分散形アクリル樹脂塗料】
やに・しみ止め効果と優れた付着性がある壁面用つや消し塗料です。また、下地への影響が非常に少ない塗料です。
【水性塗料】
複数のメーカーから水性塗料による外部木部塗装仕様が提案されています。塗膜に弾力性,透湿性,通気性を有するタイプもあります。